はてなダイアラードラマ百選

「白い影〜Love and Life in the white〜」(ASIN:B00005L99A)
2001年1〜3月・TBS系日曜夜9時・東芝日曜劇場内(2001.1.14〜2001.3.18)
STAFF
プロデューサー:三城真一
脚本:龍居由佳里
演出:吉田健(1)(2)(5)(9)(10)、福澤克雄(4)(6)、平野俊一(3)(7)、金子文紀(8)
原作:渡辺淳一「無影燈」
主題歌:竹内まりや「真夜中のナイチンゲール
CAST
直江庸介:中居正広
志村倫子:竹内結子
小橋俊之:上川隆也
行田三樹子:原沙知絵
二関小夜子:菊川伶
高木亜紀子:小西真奈美
志村清美:市毛良枝
行田祐太郎:津川雅彦
戸田次郎:吉沢悠
石倉由蔵:いかりや長介
STORY
渡辺淳一の『無影燈』を原作に、倉本聰脚本、田宮二郎山本陽子主演で1973年にドラマ化された名作が、中居正広竹内結子のフレッシュなコンビでリメイク。天才外科医直江とそんな直江を健気に慕う若い看護婦倫子との、せつなくも悲しい恋の行方が繊細なタッチでつづられる感動作だ。
医者としての腕は抜群だが、どこか人を寄せつけない冷たさを漂わせる直江。そんな直江の秘密めいたところに次第に引かれていく倫子。しかしこのときすでに、直江の体は不治の病に冒されていた…。(amazonより引用)

■前書き
 実はまったくといっていいほど、最近ドラマは見ない。というかTVを見ない。見てもかろうじてSMAPさんのドラマくらいか。それもビデオにためまくった結果、一気に見るというダメっぷり。にもかかわらずドラマ100選のお話をid:yasaiさんからいただいた。いただいた時点でSMAPのドラマにしよう、と思うも、どれにするか非常に悩んだ。ファンとしてだけの思い入れを語っても仕方がないし、読んで面白いものにはならないだろう。そこで「SMAPファンである私」と「中居正広ファンである私」と「ネットでの私」の3つの「私」に絡む非常に個人的な話をしよう思う。少し長い話になるが読んでいただけると幸いだ。
■背景
 このドラマが放映された頃、中居正広のドラマというとシリアスなものはほとんど皆無に近く、バラエティの人というイメージの中居正広からはほど遠い雰囲気のドラマかつ、過去に田宮次郎主演で同タイトルのドラマが放映されていることもあり、前評判はあまりよくなかったような記憶がある。結局放映が終了する頃には今まで中居ファンでなかった女性たちが直江(=中居)ハマり、いくつものファンサイトができ、そしてNN病(直江中居病)という言葉まで作り出され、2003年の正月にはスペシャルドラマ(ASIN:B00008MMW7)が放映されるまでになった。このドラマによって、中居は2002年の映画『模倣犯』ピース役、そして2004年の『砂の器』と続くシリアスな役柄としての役者の幅、そしてファン層を広げるきっかけになった。中居的にはエポックメイキングなドラマだったとも言える。
■インターネットとSMAP中居正広
 私がインターネット及びパソコン通信に本格的に触れたのは1997年のことになると思う。そこで私は初めてチャットというものを体験した。それは中居のファンサイトのチャットで、その後すぐに沖縄に引越したこともあって、私はずっぽりとインターネット及びそのサイトのチャットにハマっていく。そこで出会った仲間たちはみなSMAPファンで、そして中居ファンがほとんどだった。私の初めてのインターネットで出来た友人たちだ。
 その仲間たちの1人がSさんだ。当時すでにガンという病魔に侵されていた彼女は中居ファンで、中居に対するツボは私とほとんど同じ。毎週末のチャットが楽しくて仕方がなかった。ネットを通じ私たちはどんどんと親しくなっていき、実際にも会うようにもなった。
 そして1999年の秋に彼女は沖縄に遊びに来た。那覇空港でもう1人の友人が合流するまでに3時間ほど時間があり、そこでいろんなことを話した。それは主に彼女の病気の話であり、そして命の話であった。死にたいと思ったこと、痛みがひどいこと、経口で飲むモルヒネのこと、自殺未遂をしたこと、でも死ねなかったこと、そして今は最期まで戦うつもりでいるということ―――。彼女は話し終わると、この話を私とするために沖縄に来たんだ、とも言っていた。
 翌2000年の冬、私は彼女の住む大阪まで遊びに行った。自宅療養中の彼女は歩くのもつらそうではあったけれど、元気だった。大阪に住むネットの友達がみんな彼女の家に集まり、一緒に鍋を囲みビールを飲んだ。
 その春、彼女はその命を終えた。
 彼女の葬儀でお母さんが言った。入院をしたのは彼女が亡くなる3週間ほど前のことで、最期まで彼女は頑張ったのだと言う。彼女は最期まで頑張ったのだ。
 『白い影』というドラマが放映されたのは、その翌年の冬のことだった。
■直江庸介の死とSさんの死
 直江は多発性骨髄腫に侵され、余命いくばくもない。痛みを抑える薬を自ら投与し、自殺未遂をした青年戸田には「人間はそんな簡単に死ねるものじゃない」と言い、自分の担当するガン患者である石倉には「人には悔いの残らない死が必要」と言う。そんな張り詰めた状況の中、看護婦である倫子との恋に落ちていく。最終話、直江は倫子を北海道旅行に誘い、そして支笏湖で自らの命を絶つ。倫子の中に新しい命を残して―――。
 その最終回を見て私が真っ先に思ったのはSさんのことだった。中居ファンだったSさんが生きていたら、絶対にこのドラマを見たことだろう。彼女はこのドラマを見てなにを思っただろう。直江は「悔いのない死を」と言った。直江にとって「悔いのない死」がなんだったのか、知るよしもないが、最後に彼は倫子という女性に出会い、愛を知り、そして自ら死んだ。果たしてSさんにとって「悔いのない死」とはなんだったのだろう。
SMAP」というアイドルグループの中にいる「中居正広」という人物を通じて出あったSさんと、その「中居正広」が演じた「直江庸介」という人物。そしてSさんも直江も病に斃れた。私にはその2人を重ね合わせずにはいられない。個人的には「アホなんじゃないのか、この直江って男は! 死ぬ間際に中出しか! んでもって自分は自殺か! バカじゃねえの!?」と思わないでもない。それが悔いのない死だというのならば、倫子のように受け入れるしかないのだ。だが、私は直江に戦って欲しかった。医者である直江が自殺という道を選びなぜ最期まで病魔と闘わなかったのか、私は責め立ててやりたかった。Sさんは戦ったじゃないか、なぜおまえは戦わない! と。
 実際のところ、私はSさんの死の間際にいたわけではない。そこには私の想像以上にもっともっとたくさんの痛みや苦しみがあったことだろう。でも私にはそれを知る術がない。同じように直江の苦しみだって知ることができない。でも、それでも私は直江のあの死を受け入れたくないのだ。それは同時にSさんの死を受け入れられなくなることに他ならないからなのかもしれない。
■最後に
 1つのドラマにこれだけ登場人物と実際の友人を重ね合わせて考えたことはなかった。それはいくつもの符号が重なることによって初めて発生したことだったのだと思う。Sさんと出会ったインターネットではこの直江によって中居ファンになった人をたくさん見ることができる。彼女たちは直江の死になにを感じたのだろうか。
「生と死」は人が避けることのできない問題だ。私だっていつか死ぬし、あなたもいつかは死ぬ。そんな中でこのドラマは私に再び「死」という問題を改めて考えさせてくれたドラマだったのだと思う。
■捕捉
 個人的に中居のドラマとしては『砂の器』の方がよかったように思う。また単純に萌えドラマとしてなら『輝く季節の中で(ASIN:B00005FSO9)』のポリクリ中に薬物中毒になってしまう中居もたまらんし、もっともっと萌えだけを前面に押し出すなら『僕が僕であるために(ASIN:B00005GZ4Y)』や『古畑任三郎vsSMAP(ASIN:B00005FSTJ)』も大変によろしい。でもそんなのは誰でも書けるお話になるのでセレクトしませんでした。ついでに言っとくとキムタク様のドラマで一番好きなのは1990年に放映された『おとうと(ASIN:B00005GUK9)』*1です。
 SMAP以外のドラマもたくさん大好きなのあるけど、とりあえずナイショっつーか語るほどの言葉がないよ。どうでもいいけど創作物に出てくる直江ってヘタレが多くない? そんなことない? いやまあ直江っていうと真っ先に浮かぶの『炎のミラージュ』なんですけどね。うへへへへ。
■次の人
次の人は「アクティブにいきたいねと思いつつ日記」のid:fujikoさんにお願いしようかと思います。

*1:幸田文原作。結核で入院しちゃう若かりしキム様がマジやばかった!