女子ヲタの歴史が語られないことについて

これは推測でしかないんですが、70年代から80年代にかけての時期、まだ女性オタクがオタクとしてライフスタイルを確立するには、社会的な抑圧が強すぎたのではないでしょうか。僕が聞いた歓声の主たちも、ロックバンドやアイドルに夢中になるようにアニメのキャラクターに夢中になったあと、なにごともなく結婚して家庭に入ったような人が多かったんじゃないかと思います。(id:putchee-oya:20050515)

私はまさにその通りだと思います。

順を追って話をしていきましょう。

過去にジャニオタの歴史については語っているんですが、若年*1ではありますが私から女子ヲタの歴史についてちょっとだけ語ります。実際にはそのムーブメントを体験していないので、頭でっかちな文章になってしまうことをお許しください。だってオタク第一世代じゃないからさ。もっと識者のおねえさんヲタがいると思うんですがね。

女子ヲタを語るには少女漫画ファンから語らねばなりません。いわゆる24年組の漫画を支えていたのはもちろん女性です。同時に同世代のヲタクと言われる男性の一部もそれを読んでいましたが、ここでは除外します。24年組の漫画にはさまざまなものがありますが、それまでの漫画と決定的に異なることは、必ずしも少女の物語ではなかったということ。そして少年と少年の愛も描かれました。その代表作と言ってもいい「風と木の詩」の第一巻は昭和52年発売です。そして昭和53年、後のJUNEとなるComic Junが発刊されました。

ヲタ第一世代を仮に岡田斗司夫氏(昭和33年生まれ)らとしましょう。彼らは昭和30年代生まれ*2。彼らと同時期に同世代の女性ヲタがいたことは間違いないのです。

ここでたずねます。私が薄学のせいかもしれませんが、岡田斗司夫氏らと同世代で、ちゃんと漫画のことを話せる、そしてヲタクのことを話せる文化人がいますか? やおいの文化について語れる人がいますか? 答えは否。なぜでしょう? なぜなのでしょう?

栗本薫がいる、とおっしゃられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし彼女は昭和20年代生まれ。オタク第一世代というよりは、文化を作ってきた側であり、享受してきた側とはいいがたいのです。

ここに婚姻率、および初婚年齢を示した厚生労働省の資料があります。

昭和50年の平均初婚年齢は24.7歳。昭和55年の平均初婚年齢は25.2歳。婚姻率も今に比較すると非常に高い。つまり昭和30年代生まれの彼女たちはほとんどがこの時期に結婚したのでしょう。そして家庭に入り、育児に忙殺された。それが普通だった。その後も若干の変動はあれど、結婚によってヲタから卒業した女性は多いでしょう。

その結果、ヲタク女子は語る言葉を持たなくなってしまった。

そしてもうひとつ。語れる女子ヲタがいないという背景には、男子の方がヲタクを職業にしやすいということもあると思います。昭和30年代生まれの彼女たちが男子ヲタたちと肩を並べてヲタ仕事をしたところで、当時はおそらく寿退社が当然だったでしょうし、ヲタ業界に女子は非常に非常に少ない。これはヲタ業界に従事する女子として感じているリアルです。もっともこれはあくまで、マンガ家や小説家などではなく、会社員としてのヲタの話ですが。

なぜなのか。

ヲタ業界は非常に不規則な生活を強いられます。10年前、20年前は今以上だったことでしょう。体力勝負でも勝てませんが、なにより女子には不規則な生活が大敵なのです。そんなもの、と男性は考えるかもしれません。しかし、不規則な生活はイコール生理不順を巻き起こすということです。生理不順は同時にホルモンのバランスも悪くさせます。結果、精神的にも安定しなくなってしまう。私は婦人科系のトラブルを抱え、業界をやめていった女の子を数人知っています。結果、ヲタ業界は通常の社会よりもはるかに男性的な社会となっていくのです。*3

この2つの要素だけでも、女子ヲタのことを語れるプロがいないのは当然のことだと思います。そして当事者がいないヲタ論壇はますます男性化していく―――というわけです。

*1:つーても今年で30

*2:ここにはあの宮崎勤(昭和37年生まれ)も含まれます

*3:もちろん今も当時もがんばっている女性職業ヲタの方はいらっしゃいますよー。